大判例

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高松高等裁判所 昭和33年(う)130号 判決

昭和三十三年一月十日附起訴状第三の(一)によれば、被告人は昭和三十二年十一月二十三日午後九時頃徳島市昭和町八丁目六十三宮川儀一方庭に於て同人所有の敷布団一枚及び布団綿時価合計九百円相当を窃取したという事実を起訴して居るのにもかかわらず、原判決は被告人が昭和三十二年十一月二十三日徳島市昭和町八丁目六十三宮川儀一方で宮川千恵子所有の敷布団一枚及び布団綿約三百匁時価合計九百円相当を窃取したと認定したことは所論指摘のとおりである。論旨は右は起訴なき事件につき判決した違法があるというのである。しかし原判決が犯行日時につき起訴状に記載された時間を示さなかつたのはその点は記載を省略したに過ぎないものと認められるし、又起訴状に宮川儀一方庭とあるのを宮川儀一方としたのは同人方庭も結局は同人方と同じであるから同人方としたに過ぎないのであつて、その犯行日時、場所及び被害物件において同一であり、しかもその日時場所における被告人の犯行はそれ一回であつて他にまぎらわしい事実の存しない本件においては、その敷布団等の所有権がその家の主人に属して居るか或は主婦その他の家族に属して居るかという相違により事実の同一性が変るものではない。従つて原判決は審判の請求を受けた事件につき判決して居るのであつて審判の請求を受けない事件について判決したものではない。只訴因変更の手続を経ることなく宮川儀一所有の敷布団等とあるのを宮川千恵子所有の敷布団等とした点において訴訟手続の法令違反があるに過ぎないものと解すべきである。然るところたとえ判決において被害者を証拠に基き右の如く起訴状と異る者に認定しても本件の如き場合においてはその訴訟手続の違背は判決に影響を及ぼすものではないから破棄理由となるものではなく論旨は理由がない。

次に職権で審査するに、前記起訴状第三の(五)によれば、被告人は昭和三十二年十二月一日午前二時過頃徳島市消防署津田分署において篠原恒利所有の消防制服上下一着外衣類七点靴一足時価合計二万四千余円相当及び矢作徳蔵所有の背広上衣一着外衣類六点時価合計一万一千余円相当を窃取したとして、一個の窃盗として起訴して居るのに、原判決はその添付一覧表に(5)(6)としてこれを二個の窃盗として認定判示して居るのである。しかし証拠に徴するときは、被告人は右消防分署の同一室である職員宿所で其処においてあつた篠原恒利及び矢作徳蔵の前記所有品を同一機会に共に窃取したことが明らかであるから、数個の窃盗罪が成立するのではなく包括して一個の窃盗罪が成立するに過ぎないのである。然るにこの一個の事実を二個の事実として二罪の成立を認めた原判決はこの点において事実を誤認したものといわなければならないのである。しかし被告人の犯行はこの事実だけではなく他になお十回の窃盗を犯して居るのであつて、全部で十一個となるか十二個となるかの相違に過ぎないのみならず、右の一個となる事実を二個と見たとしても事実そのものには変りがないのであるから右誤認は未だ判決に影響を及ぼすものとは考えられない。

(裁判長判事 玉置寛太夫 判事 渡辺進 判事 安芸修)

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